バフェット成功12の原則を紹介。『株で富を築くバフェットの法則』【書評】
今回は、『株で富を築くバフェットの法則』を紹介します。
著者は、バフェット研究を20年以上続けた投資家です。実際に自分の運用するファンドで、「バフェットの法則」に基づいて投資し、好成績を収めました。その著者が、バフェットの成功の要因を探り、12の原則をまとめています。
バフェットの12の原則
バフェット成功の背景に、12の原則があると著者は述べます。原則は以下です。
事業に関する原則
・シンプルで理解できる事業か
・安定した事業実績があるか
・長期的に明るい見通しがあるか
経営に関する原則
・経営者は合理的か
・株主に率直に話せる経営者か
・組織の習性に屈しない経営者か
財務に関する原則
・1株当たり利益ではなく、自己資本利益率を上げようとしているか
・「オーナー利益」を考えているか*
・利益率の高い企業を探しているか
・1ドル利益を留保したら、企業の市場価値も1ドル以上あがるように心がけているか
市場に関する原則
・事業の価値はどれくらいか
・その事業を価値よりはるかに安い金額で買収することは可能か
*「オーナー利益」:純利益と減価償却費から設備投資と世オスされる追加運転資金を差し引いたものです。
バフェットは、キャッシュフロー分析は完ぺきではないと考えます。役立つのは初期投資が大きく、その後追加投資が少ない企業(不動産、ガス田開発、電話など)。一方、設備投資が継続的に必要な製造業では、キャッシュフローだけ見ても正しい価値を把握できません。そこでバフェットは、キャッシュフローよりも「オーナー利益」という考え方を使います。ただ、アナリストの分析のような厳密なものではが、大まかに正しいことを目指したものといいます。
また本書では、バフェットの保有株購入経緯を、ケーススタディとしてまとめています。例えば、ワシントン・ポスト、コカ・コーラ、ウェルズファーゴ、IBMなど9つの銘柄に対し、原則が正しいことを説明していきます。
行動の優位性
本書のまとめ部分で、バフェットだけが偉大な投資家になれたのはなぜか、その要因が、行動、分析、組織の優位性にあると説明されています。以下では、改めての学びとなった「行動の優位性」について詳細取り上げます。
投資で成功するためには、高い知能指数や高度な勉強は必要ないと、バフェットはいいます。最も重要なのは、気質であり、気質とは合理性だとしています。
ワシントン大学で、ビル・ゲイツとバフェットが学生からの質問に答えたことがありました。学生の「なぜ裕福な今の地位にたどり着いたのか」に対して、
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知能指数ではありません。大事なのは合理性です。いつも考えていることですが、知能指数やほかの才能は、エンジンの馬力に相当します。しかし、出てくる結果、つまりエンジンをどれだけ効率的に動かせるかは、合理性次第です。400馬力のエンジンを積んでいても、100馬力しか出せない人がたくさんいます。200馬力のエンジンをフルに働かせるほうがずっといいのです。
それでは、賢い人々が自分の持っているものをフルに活かせないのは、いったいなぜなのでしょうか。癖や性格や気質、そして合理的に行動するということが関係してきます(中略)。やらない人は、周囲があなたにそうさせないのではなく、あなたがやろうとしないだけのことです
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と回答しています。この合理性で重要になるのが、「目の前の現実を超えて、将来可能なシナリオを分析し、熟慮した上で選択にたどり着くこと」です。
結局いくら賢い人でも、株式市場で成功できないのは、合理的に行動できない場合が多いためです。つまり、理にかなった行動は頭ではわかっていても、それを実行できるかは別の話なのです。ちゃんと実行できてこそ成功できるのです。名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』でも、行動ファイナンスの観点から、投資家の非合理的な行動がもたらす影響は触れられています。
私は賢くないのですが、合理的な行動をとろうとは常々考えているものの、実行できず失敗することがあります。その一つをご紹介します。
昨年から米株市場、特にハイテク株は割高感が高まっていました。そんな中でハイテクETFに投資し、失敗したと感じている件です。
昨年末、ナスダックも高値圏にあり(グラフ参照)、参入はリスクが高いと感じていました。しかし、高値からさらに上がっていく状況を見ると、自分も乗り遅れまいと、いくつかのハイテクETFの買い付けを進めてしまいました。例えばバイオテクノロジーの「グローバルX ゲノム&バイオテクノロジー ETF」(GNOM)もその一つです。買付前は合理的に、ここはしばらく様子見すべき、と考えました。しかし、徐々に我慢できず、高値段階から買い付けを継続してしまいました(非合理的な行動)
その結果、現在の損益状況は-44,708円(-13.3%)です
見ている期間が短いので、これを失敗というのか、長期で見れば上がるから放っておけばいいとの見方もあるかもしれません。ただ、その資金で例えばジョンソン・アンド・ジョンソンなど、自分のポートフォリオのコア銘柄を買い増していた場合と比べてみると、リターンは小さくなります。
仮にもし、GNOMが年末にかけて本日の約20ドルから25%値上がりして約25ドル(昨年12月の水準)に戻り売却できたとしても、GNOMへの投資資金で購入できたジョンソン・アンド・ジョンソンの配当(のみ)よりもリターンは小さくなります。
もちろん、長期でGNOMの価格が上がり、売却益が大きくなることもあると思いますが、現在上がってきている長期金利や、インフレ懸念とテーパーリング(量的緩和の段階的縮小)の議論を考えれば、その期待に賭けるよりは、安定したジョンソン・アンド・ジョンソンへの投資の方がベターでした。
頭ではわかっていても、実際の行動が伴わなかったことによる失敗は枚挙にいとまがないですが、今後はこういったことが少なくなるように、努めていきたいと、本書を読んで改めて感じました。今回は以上です。
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