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投資クラブでは意思決定が隣人に影響される │ 投資に活かせる行動経済学の考え方を学ぶ

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リチャード・セイラ―、キャス・サンスティーン『実践行動経済学

行動経済学は、投資を考えるうえでも一つの重要な要素となっています。本書は、行動経済学(主にナッジ)の考え方や、それを世の中に当てはめた場合の事例を具体的に紹介しています。

そもそもナッジとは、人々の選択を「そっと後押しすること」です。ナッジの有名な事例に、アムステルダムの空港の男性用小便器に、ハエのマークを付けることで、小便による飛沫汚れが80%削減できた話があります。小便の目標(ハエ)があると、各段に注意力が高まり、精度も向上するようです。また、小学校のカフェテリア(給食がいくつか自由に選択できる)で、子どもにとってより良い食品を棚から選択できるようにすることも、ナッジです。後者の事例では、選択の設計をする人(「選択アーキテクト」)といいます。

本書では、ナッジを民間部門だけでなく、公共部門にも広げることで、社会をよりよくしていこうと提案しています。これはナッジを適用するという個別的なアプローチというよりは、「リバタリアンパターナリズム」*という新しい潮流と定義して説明しています。

*アメリカでは、自由の価値が重視され、選択の自由が保障されるべきとの考え方が強くあります。リバタリアンは、経済的な自由だけでなく、政治・社会的な文脈での個人的な自由を重要視する思想です。そこに対して、パターナリズムという言葉を付け加えています。パターナリズムは、弱い立場の人に対して、彼らの利益になるからと介入する考え方です。両方の言葉の意味は、一見矛盾しているようにも見えます。しかし、パターナリズムリバタリアンという修飾語をつけることで、「ソフトで、押し付け的でない形のパターナリズム」を意味するといいます。リバタリアンも、パターナリズムも、人々の固定観念が強くある言葉ですが、それをあえて使うことで、聞くものの印象に残りやすくなっているように個人的には感じます。

この記事では、以降、本書の投資にかかわる事例についてかいつまんで説明します。

「第3章 言動は群れに従う」において、人が他人がすることに従いやすいことを説明しています。

経済学においては、エコノ(経済学でいう合理的な人間)であれば、様々な場面で合理的選択を行うはずですが、現実世界のヒューマンは必ずしもそうなりません。実際、心理学の研究から、人の種々の判断に関する大きな同調効果が発見されています。例えば、肥満は伝染するそうです。太りすぎの友人がたくさんいる人は、太りすぎになる可能性が高くなります。友人はあなたをナッジしようとしたわけではあないですが、同調してたくさん食べてしまうそうです。投資意思決定でも同様です。投資家は、友人や隣人に影響されます。他人のしたことが合理的なこともあれば、そうでないこともあります。実際、投資クラブは隣人に影響され、自身で情報収集せず盲目的な売買に走る傾向があるとの研究結果があります。バブルであれば、このような買いの行動が社会的伝染によって広がっていくのです。他の人が市況を楽観的に見ていて、それがスパイラル状態になると、メディアが「新しい時代」ともてはやすようになり、人々は新しい時代にいると思い込み、投機バブルのループが何度も繰り返されるそうです。

「第6章 意志力を問わない貯蓄戦略」では、高齢化で年金の持続性が脅かされる中、個人での資産形成にナッジが貢献するといいます。すなわち確定拠出年金です。確定拠出年金は、働く世代にとって望ましい面が多数あります(もちろん投資のリスクもあり)。しかし実際のところ、労働者はそういった長期での資産形成のことを考えなさすぎるヒューマンなので、放っておくと手を付けない人が多数出てきてしまいます。また、プラン選択肢の中にたくさんのファンドがあり、どれを選べばいいかわからず、あきらめてしまう、などです。そこで加入のステップ(ハードル)を軽く(低く)することが重要です。例えば、加入書類を簡略化したり、新規雇用者のオリエンテーション期間中に加入カードを配布するといった形です。一度従業員が加入資格を得ると、脱退率は極めて低いそうです。また、拠出率やポートフォリオも保守的なものをデフォルト設定しておくことで、従業員の年金形成に貢献するのです。

「第7章 オメデタ過ぎる投資法」では、エコノは株式vs債券比率などポートフォリオの考え方を、リスク・リターンの考え方から合理的に判断します。しかし、現実世界でヒューマンは、合理的な計算の仕方が分からないといった問題が発生します。そこで、現実には以下の課題が出てきます。一つに、短期の変動に過度に影響される。もう一つは、経験則に基づいて投資する、という点です。

一つ目については、ヒューマンが損失回避志向が強い点が特に影響します。言い換えると、ヒューマンは損失を嫌う気持ちが利得を好む気持ちの二倍強いと考えて、株式投資してしまうということです。ここに対しては、「リスクに対する姿勢は、投資家がポートフォリオをモニターする頻度に左右される」とも言っています。つまり、長期で放っておくのが一番下げでの投げ売りなど不用意な市場からの退場を防ぐことにつながるということです。

二つ目については、ノーベル経済学賞受賞のハリー・マーコウィッツ(現代ポートフォリオ理論の創設者)を例に挙げています。彼ほどの人でも、自身の退職金口座の配分の仕方を問われ、「資産クラスの長期共分散を計算し、効率的フロンティアを描いておくべきでした。私はそうしないで拠出金を債券と株式に五十対五十に振り分けました」と説明しました。つまり、高度に洗練された投資家でも、投資先の意思決定は非常に難しく、単純な経験則が使われるということです。

そのため、将来的な資産となる確定拠出年金で、個人の経験則でリスクの高い商品のみを積み立てるのでは、将来的に引き出しタイミングなどによっては、年金が減りかねません。また、リスクを取らな過ぎて、インフレに負けるようでは、資産形成として不十分です。そこで、様々な世代や資金状況の人のリスク許容度を満たすようなブレンドのファンドを提供して加入者の選択を手助けするように設計されています。(選択肢が多すぎると)

以上みてきたように、投資に関する本書の記載そのものは、バブルや、確定拠出年金を世の中としてどう推進するかといった点に限られます。しかし、そもそものヒューマンの陥りやすいバイアスや、既存の社会制度(社会保障、臓器提供、結婚)、地球環境保護に対するナッジの活用方法に目を通すのは、単純に面白いですし、行動経済学がいかに今の世の中を分析するうえで有効か理解できると思います。ですので、まだ読まれたことのない方は、ぜひ手に取っていただければと思います。

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