【衝撃】たばこ銘柄 株価復活の新戦略?【フィリップモリス、アルトリア】
先日、たばこ大手による「脱たばこ」戦略の大きな一手が実現されました。
フィリップモリスやアルトリアなどたばこ大手は高配当株ですが、市場環境は厳しい状況です(過去記事参照)。
そのため株価も、かつての水準と比較すると低めです。
そんな中、たばこ大手のフィリップモリス(PM)が、7月に吸入薬メーカーのベクトラ買収に合意したと報道されました(ロイター記事)。そして9/16こちらが実行されたと報道されました(CNN記事)。
同買収は、各所から批判がでていました。例えば、British Lung Foundation(肺の健康促進を目的とした慈善団体)など業界団体は、政府補助金が取り消されたり、大学や研究機関が共同開発を拒否する恐れがあり、今後の研究開発能力・事業運営に支障が出ると警告しました(ガーディアン記事 )。
本件は、米プライベートエクイティファンドのカーライルとの買収合戦になりましたが、提案金額が高かったフィリップモリスが競り勝ちました。つまり、ベクトラ側も受け入れたのです。
フィリップモリスにとって同買収は、端的には「ニコチンの先へ」(Beyond Nicotine)と題する大方針に沿っています。前提として、たばこ産業は健康懸念で市場頭打ちです(過去記事参照)。例えば、フィリップモリスは英国で10以内にたばこ販売をやめると明言しています。日本でも10年以内にたばこ撤退予定です(日経記事)。そのため、たばこ依存度を下げた事業構造を実現すべく、電子タバコや呼吸器薬など、無煙製品の売上比率を現在の1/4から4年以内に50%にまで引き上げる方針です(CNN記事)。今回の買収は、そのための戦略的な一手です。
フィリップモリスの発表資料でも、自社の既存の呼吸にかかわるサイエンス(inhalation scienceと記載)の知見を活かし、業界でまだ満たされていないニーズに向けて、研究開発をするといっています(IR資料「Philip Morris International Announces Unconditional Offer for Vectura Group PLC」より)。そして、それは自社のトランスフォーム(変革)のためにもなるとしています。
とはいえ、冒頭の批判があったように、一民間企業のバリューチェーン戦略との懸念が出てもおかしくありません。平たく言えば、「自社のたばこで呼吸器疾患者を増やし、自社の呼吸器治療薬を提供し、ボロ儲けするんですよね?」というものです。悪く言えば、「魔の好収益フロー」ともいえそうです(これが機能したら、衝撃的にまずいですね)。これに対して、事業運営を通じ、株主に対して説明できることが大事だと思います。発表資料には、ベクトラの自立性を維持しつつ、フィリップモリスの知見や販路にはアクセスできるということです。ですので、それが実現されているかは監視していく必要はあると思います。
今後、同買収の結果が、長期でどう株価に影響していくか、注目したいと思います。またフィリップモリスは、脱たばこ戦略でアルトリアの先を言っている印象です。フィリップモリスによるメディカルやライフサイエンスへの展開がうまくいけば、アルトリアにとっては、今後の戦略の一つの参考になると考えます。
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