Mikeの投資ブログ

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【倒産危機のプレッシャー】困難にどう立ち向かうか。ベン・ホロウィッツ『HARD THINGS』【書評】

今回は、ベン・ホロウィッツ『HARD THINGS』をご紹介します。

著者は起業家を経て、ベンチャーキャピタル(VC)*「アンドリーセン・ホロウィッツ」を設立しました。世の中には多数のベンチャーキャピタルが存在しますが、同社は世界でもトップクラスの一社です。
ベンチャーキャピタル:スタートアップなど未上場企業への投資会社

そんなVCを率いるベン・ホロウィッツは、日々の仕事でも、自身の困難(HARD THINGS)から得た教訓を生かしているといいます。本書では、自身のHARD THINGSを生々しく紹介しながら、そこからの学びを抽出、整理しています。

本書は、スタートアップで働いてみたいと考えている方にとっても、前半の創業期のパートを読むだけでも大変参考になると思います。私は現在、日本企業でスタートアップへの投資業務も行っていますが、「スタートアップ界隈の人」とまで言えるレベルでは全くありません。そのため、出資先や買収検討の対象企業とやり取りをする中で、あちら側で何が起こっているのか、どういうマインドで仕事をされているのか、本書を通じても学べる点が多かったと感じています。

また本書は、スタートアップに限らず、あらゆるプロジェクトで発生するネガティブな事象に対する効果的な対処法が豊富に記載されています。これは、起業家やリーダーだけでなく、一般企業において、他部署やチームメンバーを動かさないといけない立場の人にも、参考になるアドバイスだと考えます。ですので、HARD THINGSにどう立ち向かうべきか悩んでいる方にも、ぜひ手に取っていただきたいと思います。

今回の記事では、前段の起業から売却までの要約と、後段HARD THINGSへの対処法、さらに私の感想を記載します。 

あらすじ

ベン・ホロウィッツは、1966年生まれで、コンピューターサイエンスを学んだ後、3DのCGを作っていたベンチャー企業に就職しました。その後、のちに「アンドリーセン・ホロウィッツ」のパートナーとなる天才プログラマー、マーク・アンドリーセンが共同創業したネットスケープで働き始めます。ネットスケープは、世界初のブラウザ「モザイク」を発明した有名企業でした。しかし、その後マイクロソフトが「インターネット・エクスプローラー」(IE)を開発し、ウィンドウズ95に無料で組み込んだため、ネットスケープは苦境に陥りました。そしてAOLに買収されました。そのため、ベン・ホロウィッツとアンドリーセンは、世界初となるクラウド・コンピューティング・サービス*を行うラウドクラウドを創業しました。

*それまでは、各企業は自社内のサーバーもしくはレンタルサーバーでコンピュータ処理を行っていました。それが、ネットを介してサービスプロバイダのネットを介し、データセンターで処理されるようになりました。アマゾンやグーグル、マイクロソフトなどが現在のクラウド大手ですが、当時その最先端を行っていたのが、ラウドクラウドでした

ラウドクラウド設立後、ベン・ホロウィッツがCEOとして様々なHARD THINGSに直面します。大まかなものだけでも、競合との開発競争、開発投資のための資金調達局面でのドットコムバブル崩壊、倒産危機、妻の入院、市況悪化による競合破産、生き残りをかけたソフトウェア事業切り離しプロジェクト、社内での反対、戦時のCEOとしての断行、最大顧客の破産、未払金の回収頓挫、株価暴落、資金調達困難、ラウドクラウドの主要事業売却、レイオフ、株価再び暴落、ソフトウェア事業の新会社オプスウェアからの契約解除・返金依頼、対策としてのナスダック上場企業買収検討、社内での反対・非難、競合との競争激化による顧客ロストの危機、、、、、

などを経ながら、最終的には事業を軌道に乗せました。そして売上1億5000万ドルになるビジネスへと成長させました。また株価も0.35ドルから6-8ドルへと上がり、時価総額も8億ドルを超えることもありました。その後、11社がオプスウェアの買収に興味を示しました。オラクルやBMCソフトウェア、HPなどがいましたが、最終的にHPへの売却で、一株14.25ドル、総額16億5000万ドルのディールとなりました。

HARD THINGSへの対処法

著者は、上記の経験から、HARD THINGS対処の知恵を以下のようにまとめています。

・物事がうまくいかなくなった時の対処法

(成功するCEO、人を正しく解雇する方法etc)

・第一に人を大事に、次に製品、最後に利益を大切にする

(部下を教育すべき理由、幹部の採用の困難etc)

・事業継続に必要な要素は何か

(正しい野心、肩書と昇進の在り方、企業文化の構築etc)

・やるべきことに全力集中するべき

(平時のCEOと戦時のCEO、自身をCEOとして鍛えるにはetc)

・起業家のための第一の法則―困難な問題を解決する法則はない

(最高を維持するetc)

すべて紹介でいないので、私が印象に残った点を記載すると、成功するCEOの秘訣をよく聞かれるが、そんなものはない、という点です。ただ、際立ったスキルが一つあるとすると、「良い手がないときに集中して最善の手を打つ能力だ。逃げたり死んだりしてしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとして最大の違いを見せられるときである」と言っています。そして、厳しい課題には、「武士道」の考え方で、「常に死を意識せよ」としています。というのも、戦士が常に死を意識し、毎日が最後であるかのように生きれば、あらゆる行動を正しくできるから、ということです。

感想

Mikeは、日本企業でスタートアップなどパートナー探索や投資業務をしています。

日本企業”あるある”かと思いますが、その中で多くの場合、「なぜ我々の会社はこんなに上から目線で対峙するのだろう」という疑問を常々持っています。例えば、構想が実際に実現可能かを確かめるProof of Concept(概念実証)でも、「なぜこんな低レベルなの」とか「イケてない」みたいなことを、日本企業側は平気で述べます。また契約交渉などでも、我々は社内確認など無駄に煩雑でものすごいトロいのですが、それを棚に上げて、相手が不快になっても、強気な交渉をしています。当然ビジネスですので、Win-Winになるように、また最高の成果物を作れるように、スタートアップと対峙します。ただし、ベースが上から目線なので常々疑問を持ってきました。

そんな中、本書を読んでスタートアップへの尊敬の思いを強くしました(もちろん会社によりますが)。例えばベン・ホロウィッツは、倒産が迫る中で、開発チームに大きな犠牲を強いる判断をしなければなりませんでした。自身は後悔していました。しかし、最高のエンジニアの一人だったテッド・クロスマンは、そのプロジェクトを進めたときのことを、後年次のように話しました。ベン・ホロウィッツは、それを知って涙を流します。

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ラウドクラウドとオプスウェアで、ダーウィン・プロジェクトは一番楽しく、一番大変なプロジェクトだった。週7日間、朝8時から夜10時まで、6か月間休みなく働き続けた。あれはとんでもなかった。週に一度、妻と夜にデートをして、午後6時から深夜0時まで全神経を妻に集中させた。そして翌日、それが土曜日であっても、午後8時に会社に戻り、夕食まで会社で過ごした。家に帰るのは10時から11時だった。毎晩だ。そして、それは私だけではなかった。社員全員がそうだった。

我々に期待さ入れていた技術的な仕様は素晴らしいものだった。どうやって実現するかブレインストーミングを重ね、それを実際の製品へ落とし込んでいった。

大変だった。しかし楽しかった。その間に誰かがいなくなった記憶はない。あれはまるで「やるしかない。やらなければここにいられない。ほかの仕事を探さなくちゃならない」という雰囲気だった。それは、固い絆で結ばれたグループだった。多くの未熟な連中が、本当に一段成長した

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長時間労働がどうとかいう話ではなく、単純に「面白い」と思いながら、最高のモノを作るために困難に全力を尽くしているのが素晴らしいと感じました。そうやってできてきた成果物に対して、もちろん要求を満たすとか、製品化に向けてまだまだといった課題などいろいろあるでしょうが、ベースは尊敬の思いをもって相対しないといけないと感じました。

今、Mikeが仕事で対峙するアメリカ西海岸のスタートアップについても、まだまだ事業化には遠いですが、大きなビジョンを語ったりしています。彼らも、こうやって限られたリソースの中で全力で取り組んでいるのだと思うと、とても尊敬します。そこに対する我々の目線や対応の仕方は、しっかり考えていかないといけないと感じています。

今回は以上です!

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