【インデックス投資をアウトパフォームするには】シーゲルによる高配当再投資戦略【書評】
今回は、ジェレミー・シーゲル『株式投資の未来』をご紹介します。
シーゲルは、ペンシルベニア大ウォートンスクールの教授です。本書では、高配当銘柄の再投資戦略がなぜ有効かを、わかりやすく説明しています。また、分散型のインデックス投資を上回る可能性があるとも主張しています。ですので、インデックスだけで物足りないと考えている方など、高配当再投資を検討している方で、まだ読んだことがない方にとってはお勧めです。
シーゲルはまず、「成長の罠」にはまらないよう警鐘を鳴らします。
「成長の罠」とは、ハイテク銘柄のような技術革新の先端を行き、経済成長をけん引する企業よりも、話題性の低い業界の老舗企業の方が大きなリターンをもたらすということです。(これは、個別銘柄や業界だけでなく、国にも当てはまります。例えば中国は1990年代に高い成長性から株価が過大評価され、その後急落。結局高いリターンをもたらせていません)
分かりやすいのが、1950年~2003年のIBMとスタンダード・オイルの比較です。
50年間のトータルリターンをみると、IBMは13.83%、スタンダード・オイルは14.42%でした。その理由は、配当利回りです。
そもそも主要指標を比較すると、どれを見てもIBMがスタンダード・オイルを上回っています。また最終的に、50年間で株価上昇率はIBMの方が3ポイント程度高いです。しかし、それでもスタンダード・オイルの方が、配当再投資が効いているため、トータルリターンが高まっているのです。
というのも、結局のところ、株式投資の長期リターンは、企業の増益率ではなく、増益率が投資家の予想に対して上回ったのか、下回ったのかで決まります。そのため、IBMは、銘柄検討の指標がすべて優秀でしたが、その分投資家の期待も高いのです。そのため、IBMの株価は常に高い状態でした。一方、スタンダード・オイルは、投資家の期待は高くなかったため、株価は低い状態でした。それで配当による再投資を通じた買い増しが進み、保有株数が上回り、最終的なリターンでIBMを打ち負かしたのです。実際、IBMは当初の保有株数の3倍にしかなりませんが、スタンダード・オイルは50倍になっています。
では、銘柄選択の時に投資家の期待をどう測るか。
その指標が株価収益率(PER:Price Earnings Ratio。一株当たり純利益の何倍の値段がついているかを示す指標)です。PERが高ければ、投資家は平均を上回る増益を常に期待しています。一方、PERが低ければ、平均を下回る増益しか期待されていません。そのため、PERに注意して銘柄を選択することを推奨します。低PERでもリターンの高い銘柄は、ハイテク業界など話題の業界ではなく、地味だったり、ニッチ市場で確実に収益を上げ、株主に還元する強固な基盤を有する場合が多いのです。そこに、増益率そのものの高い低いは関係ありません。
またシーゲルは、下落局面での配当の役割として、二つを挙げています。
・下落相場のプロテクター:再投資を通じて保有株を余分に積み増せるので、ポートフォリオの価値下落を受け止めるクッションとなる
・上昇相場のアクセル:相場がいったん回復すれば、下落時に保有を買い増したため、リターンが加速する
この二つにより、市場がサイクルを繰り返すうちに、最高のリターンをもたらすといいます。
ポートフォリオの更新については、市場平均を上回るリターンを実現するために必要なものではないと述べます。むしろ、S&P500などの人気の高い株価指数は、新たな銘柄を採用することで、株価急騰を招き、将来の運用成績を下げるケースが多いと主張します。それに対して、「買い持ち」(Buy and Hold)型のポートフォリオが、節税型で取引コストも低いので、長期的に財産を増やしたい人には魅力的だといいます。
さて昨今、利上げの前倒し観測により、米株式市場が不安定です。先週は、ダウ平均が5日続落し、18日には前日比533ドル安の33,290ドル(速報ベース)で終えました(参照元)。昨日21日は上げていますが、今後も不安定な値動きが続く可能性があります。
これから来る利上げをどのようにとらえるかは、投資方針次第です。短期投資の方針であれば、含み益の減少を嫌い、売却に動く人もいるかもしれません。しかし、もし長期投資方針で取り組んでいる個人投資家は、売る必要はありません。2013年の利上げの時のように、いったん下落後、いずれ回復します(2013年利上げに関する記事は下記ご参照)
また、高配当株での投資を検討中の方は、シーゲルによれば、回復後のリターン加速に寄与しますので、このタイミングでの仕込みが、後々の恩恵につながります。私も配当再投資を進めていきますので、今後も続く今回の調整局面で、しっかり仕込みをしていきたいと考えています。
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