【メルク】高配当株メルク(MRK)の株価・基礎情報│主力治療薬のおかげで今後の株価は当面安泰【銘柄分析】
今回は、高配当の製薬会社Merck & Company(メルク)の銘柄分析です。
メルクは、世界の製薬会社売上高ランキング4位の米製薬大手です。配当利回り3.51%と高配当です。また10年連続増配で、リーマンショック時も配当を続けたことで有名な企業です。
結論としては、「がん治療薬キイトルーダが当面盤石とみられる。特許切れは2028年であり、それに備えたポートフォリオ組み換えが必要。現状、ノンコア事業の婦人医療を分社化し、経営資源をがん治療、ワクチンなど成長市場に集中投資するなど方針は明確。現在の株価水準は割安感あり。そのため、買付を開始し、今後は”キイトルーダ後”の仕込み状況をウォッチ」していきます。主な理由は以下です。
・世界医薬品売上ランキング3位のがん治療薬キイトルーダを有する(売上高は2020年で14,380百万ドル、全社売上の30%)
・キイトルーダは競合品オプジーボをおさえ、市場シェアトップ。2025年は22,200百万ドルに上り、世界医薬品売上ランキング1位との予測もある。当面の売り上げ基盤は盤石とみられる
・ただし、2028年に特許が切れることから、”キイトルーダ後”に備えた仕込みが必要。その一つとして、今年前半に婦人医療の分社化をする。それにより、経営資源を成長領域のがん治療、ワクチン、病院製品、糖尿病治療薬、動物用に集中させる方針
・メルクは、過去に結核の特効薬、麻しんワクチン、おたふくかぜワクチンなどヒット商品を世に出してきた開発力が強み。2019年は製薬会社世界2位の研究開発費規模だったが、今後も成長市場向けの積極的な研究開発投資で、バイオ医薬品トップ企業を目指す方針
・株価はコロナ前を回復しておらず、PER 26.8倍とそれほど割高ではない(S&P500 20倍程度、競合アッヴィ40.3倍)。また、配当利回り3.51%は魅力
もちろん、製薬ということで一定のリスクはあります。しかし、過去長きにわたって製薬業界でトップクラスにいる企業ですので、リスク対応のノウハウはあると考えています。
では、以降で詳細を見ていきましょう。
指標
主な指標は以下です。配当利回り3.51%が特徴です。またPERは26.3倍と、現在の株価水準を考えると、それほど割高ではありません。一方、連続増配年数は、競合アッヴィは49年増配(Abbot時代含む)なので、メルクの10年は若干見劣りします。
・株価: 73.97ドル
・PER:26.83倍(Price Earnings Ratio:株価収益率)*S&P500 20倍程度
・EPS:5.83ドル(Earnings per Share:一株当たり利益)*直近4四半期
・配当利回り:3.51%
・年間配当額:2.6ドル
・配当支払月:1、4、7、10月
・連続増配年数:10年
(Nasdaq HPより)
業績
2020年売上高は47,994百万ドルで、2008年から見ると、年率6%で成長しています(2010年は米バイオサイエンス企業ミリポア買収で売上増)。2020年の営業利益率は18%でした。2010年に7%まで下がっていますが、それ以外は、概ね14%~26%の間で推移しています。
事業セグメントは、Pharmaceutical(医薬品)と、Animal Health(動物医療)、その他となります。医薬品事業が9割を占めます。
メルクの主力商品は、がん治療薬Keytruda(キイトルーダ)です。キイトルーダの全社に占める売上比率は3割と、依存度は高めです。
キイトルーダは、小野薬品工業/ブリストルマイヤーズのオプジーボの独壇場だった免疫チェックポイント阻害薬*の市場に2017年殴り込みをかけました。そして2018年以降適用例を増やし、2019年には世界で最も売れた医薬品ランキングで3位につける大ヒットとなっています。
*免疫細胞の働きを抑制する「免疫チェックポイント」を標的としたがん治療薬(参照元)
ちなみに国内市場では、市場の5割をキイトルーダが握り、オプジーボと形勢を逆転しています。
将来的には、キイトルーダの売り上げは22,200百万ドル(2025年)と2兆円を超えるとの予測もあります(GlobalData Pharma Intelligence Center Drug Sales and Consensus Forecast databaseの予測。参照元)
この水準が相対的に高いのか低いのか。2025年には、現在世界で最も売れている薬品であるヒュミラ(アッヴィの抗リウマチ薬)が特許切れで沈む中、オプジーボもおさえトップになるとみられています(参照元)
つまり、キイトルーダの勢いは現在ものすごいのですが、将来的にも強力とみられます。そのため、メルク売上の3割を占める主力商品は今後も安泰といえそうです。
それでは、いつまでキイトルーダのうまみをエンジョイできるのか。
米国での特許切れは2028年なので、それまでは可能とみられます。ですので、「キイトルーダ一本足打法」という表現をたまに見かけ、その通りではありますが、それ以外の成長領域の育成には十分に時間があります。
また、既にそのための取り組みを始めています。例えば、必要な領域に資源を集中するために、女性医療を分社化しようとしています(分社化後の企業名はOrgan & Co)。
分社化は、2021年第二四半期には完了する、とメルク側は発表しています。これにより、成長領域とみているがん治療やワクチン、病院製品、糖尿病治療薬、動物用で研究開発主導型のバイオ医薬品トップ企業を目指すといいます(参照元)
ちなみに研究開発費は競合と比較して高水準です。メルクは、歴史的にも結核の特効薬、麻しんワクチン、おたふくかぜワクチンの開発、ブロックバスター、降圧剤バソテックの開発など、高い研究開発力が強みです(参照元)。そのため、キイトルーダ以外の軸を育てるべく、積極的に研究開発投資を行っていくと考えられます。
キイトルーダ以外の製品では、以下があります(カッコ内%は売上構成比)
・子宮頸がんに対するHPVワクチンのGardasil(ガーダシル):3,938百万ドル(8%)
・糖尿病薬Januvia(ジャヌビア):3,306百万ドル(7%)
などがあります。
ただ、ガーダシルは米国特許切れ2028年ですが、ジャヌビアは22年ですので、今後製品ポートフォリオの拡充を加速させる必要があります。
キャッシュフローを見ると、営業CFを安定的に稼げているのがわかります。
一方、競合企業と営業CFマージンを比較すると、2017年以降は後塵を拝しています。
ただ、今回のノンコア事業の分社化で営業利益率は高まり(24年までに40%が目標とメルク発表)、営業CFマージンも高まると考えられます。そのため、”キイトルーダ後”を見据えたポートフォリオマネジメントに注目していきたいと思います。
配当
リーマンショックの時期も配当を続けてきました。2008~2020年でみると、年率4%で増配となっています。
ただ、配当性向は2020年89%と高めです。今後の増配には、キイトルーダが安定的に収益を上げることがマストでしょう。その先の長期で見れば、キイトルーダの特許が切れる2028年頃までに、キイトルーダ以外の柱が必要なことは上述の通りです。
株価は、リーマンショック後はおおむね右肩上がりです。昨年のコロナショック前は87.4ドルでしたが、そこまでは戻していません。
一方、アッヴィは、コロナ前の81.99ドルを上回り、113.85ドル(PER40.3倍、配当利回り4.63%)まで上がっています。
それと比較すると、メルクはPER26.8倍、配当利回り3.51%のため、今後の上昇余地や割安感、比較的高配当という点から、買いやすいと考えます。
まとめ
キイトルーダの強みから、2028年までは右肩上がりの成長が期待できそうです。今後は、ジャヌビアなど2022年に特許切れとなるものもありますので、ポートフォリオ組み換えの進捗をウォッチしていく必要がありそうです。
まずは、婦人医療の分社化後に利益率を高められること、そしてその他成長分野に資源を振り分け、適切な打ち手(成長領域での開発加速、他社買収など)ができることを確認していきたいと思います。
現在の株価水準を考えると、キイトルーダによる収益上振れは株価上昇要因となりますし、またポートフォリオ組み換えが進んだ場合はさらに上昇することが見込まれます。逆に、キイトルーダが低迷し、アナリスト予想を下回れば株価は下がるとみられます。さらに、長期的に重要となる"キイトルーダ後"の仕込みが進んでいることを示せなければ、株価は下がります。
これを踏まえると、現在の株価がコロナ前を回復しておらず、またそこまで割高ではない点から、徐々に買付を開始して、上記ポイントをウォッチしていくのがいいと考えました。
今回は以上です!
昨日は、20人の方にクリックしていただきました!大変励みになります。ありがとうございます!よろしければ、本日も応援ポチお願いします!
関連記事
ヘルスケアセクターの高配当企業の銘柄分析はこちら。
その他高配当銘柄の分析記事はこちら
・生活必需品セクター
・エネルギーセクター
・公益セクター