著名投資家レイ・ダリオ氏による成功のための原則『プリンシプルズ』【書評】
今回は、レイ・ダリオ氏の『プリンシプルズ』(Principles)をご紹介します。
レイ・ダリオ氏は、アメリカのヘッジファンド(資産投資会社)を立ち上げた著名投資家。リーマンショックを予測し、回避したことで有名です。その際も、過去の歴史から自身が原則を見出し、それに従った形で成功しています。そんな著者が人生や仕事での原則を説明しているのが本書です。
概要
本書は以下の構成となっています。
・Part I:著者の生い立ち
育った環境や学生時代、人生や投資での数々の失敗や、様々な意思決定に至る過程を描いています。そこから、時を超えてどの世界でも通じる因果関係を見つけ出し、自身の原則としている様子が参考になります
・Part II:人生の原則
私生活、人間関係、ビジネスなどあらゆる場面で使える人生の原則を列挙しています。
・Part III:仕事の原則
著者が創業したファンド(ブリッジウォーター)の原則を説明しています。内容的には、アイデア本位主義を実践するルールやカルチャーが説明されており、とても特徴的です。ただ、一般的な企業や組織に当てはまる組織運営やマネジメントの仕方についても参考になる内容が記されています。
生い立ち(原則を重視するに至った背景)
メキシコが1982年8月に債務不履行に陥りました。著者はその影響で破綻しました。これまでブリッジウォーターで築いてきた資産や名声、社員もすべて失いました。資金が底をつき、社員を全員解雇せざるを得なりました。この失敗の原因を、以下のように振り返っています。
・「極めて自信過剰で、感情的になっていた」
・「歴史を学ぶ価値を再認識した。実際に起きたことは結局のところ「またか」というものだった」
・「マーケットのタイミングを計ることがいかに困難かを思い知らされた」
そして最大の学びとして、「自分自身を客観的に眺め、変わらなくてはならないと気付いた。」といいます。そして、人生振出しに戻ったことで、その先の人生をどう生きるか改めて考えました。人生での挑戦とそのリスクを「危険なジャングル」に例え、以下のように述べました。
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素晴らしい人生を過ごそうと思えば、危険なジャングルを横切らなくてはならない。今いるところで安全に普通の生活を送ってもいい。すごい人生を求めてジャングルを横切るリスクを取ってもいい。どうやって選択するか。考えてみてほしい(中略)
破綻した後も、私はリスクがあっても素晴らしい人生を送る方を選ぶとわかっていた。そこで考えるべきは、殺されずに「危険なジャングルを横切る」にはどうすればいいか(中略)。間違うことのとてつもない恐ろしさを知ったおかげで、「私は正しい」と思う代わりに、「自分が正しいかどうか、どうすればわかるだろう?」と自問するように変わった。
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そして、自身が正しくあるためには、異なる見方をする独自の考えを持つ人から反対意見を聞きくことが必要だと考えました。それを含め、成功するための方法を以下だと考えたといいます。
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1.私と意見を異にするとびっきり頭のいい人を探して、彼らの推論を理解するように努力する
2.自分の意見を持たないほうがよいときを知る
3.時間を超え、どこにでも通用する原則を開発し、テストし、システム化する
4.アップサイドのチャンスを大きく保ちつつ、ダウンサイドのリスクを減らすようにリスクのバランスをとる
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これを原則として、人生のほかの局面でも応用することで、成功できたのだといいます。
さらに、失敗との折り合いについて、次のように記載しています。
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並外れた成果を上げるには、極限まで自分を追い込まなくてはならない。極限まで行くと、失敗する。そして、とてつもなく傷つく。失敗したと思う。だが、あきらめない限りそれは失敗ではない。信じられないかもしれないが、痛みは徐々に消え、他に多くのチャンスがやってくる。そのときにはそうは考えられないと思うが。重要なのは、その失敗から得られた教訓を積み重ね、謙虚さを身に着け、徹底的にオープンになること。それで成功のチャンスは増す。そして突き進めばいい
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Part Iの生い立ちは、著者自身はさらっと読み流していいと記していますが、実体験とともにこういった勇気づけられる言葉がちりばめられており、じっくり読む価値があると感じます。
人生の原則
いい人生を送るには、1)何が最善の決断かを知る、2)それをする勇気を持つことだといいます。そのための原則として、以下を挙げます(本書では、それぞれが中項目・小項目にブレークダウンされ、詳細粒度で記載がされていますが、ここでは大項目のみ挙げています)
・「現実を受け入れて対応しよう」
・「人生でほしいものを手に入れるために5ステップのプロセスを使おう」
・「徹底的にオープンになろう」
・「人の頭の配線はそれぞれものすごく違う」
・「効果的な意思決定の方法を学ぼう」
この中で、私にとって大事だと思ったものを二つ挙げます。
・「苦痛+反省=進歩」(「現実を受け入れて対応しよう」の小項目)
人は苦痛を避けがちですが、ミスや弱みから生じる苦痛に向き合い、反省しないと、教訓にならないといいます。私は、苦痛をできる限り直視しないで生活するタイプですので、これは耳の痛い指摘です。
・「徹底的にオープンになろう」
著者は、徹底的にオープンになり、さらけ出すことが、短時間に学び上手に指針を変えていくために必要と述べています。
私はこれが苦手です。いろいろ批判されると言い返したくなる、というようなところがあります。そうして相手との関係が面倒になるのを避けるため、職場の人に対しては、自分の考え方や思考プロセス、またプライベートに関してオープンではありませんでした。また、友人にもすべてさらけ出すスタンスではありませんでした。
でも、それがゆえに学びが遅いことは多々ありました。
例えば、前職で外資系コンサルティング会社にいたのですが、最初にだいぶ苦労しました。というのも、「思考プロセスのクセ」「仮説の立て方のクセ」といったものは、自身の考え方をさらけ出しながらプロジェクトを進めないと、間違った方向性のまま、間違った結論にたどり着き、最終的にはプロジェクトが炎上します。当然、毎晩朝までマネジャーに絞られるので、炎上まで行く前に手を打たれるのですが、マネジャーに自分をさらけ出さないと、「ロジックがおかしい」とか「もっと効率的なアプローチがあるでしょ」といった指摘が、必要なタイミングでなされません。
でも、さらけ出すとさらけ出したで、「頭悪いなこいつ」となりますので、ためらいがありました。でも、次第にそれではだめだと思い、ホワイトボードの前で自分の仮説を説明し、頭が悪いところ、苦手なところをさらけ出しながら、もろもろ突っ込みを受けました。その中で、あるべき思考法を身に着けられるようになっていきました(端折って書いているのですが、実際はマネジャーから「ぶっ殺すよ?」といわれ、産業医に相談したりといった事態もありましたが)
今でも徹底的にオープンかというとそうではないので、今後も自分の課題と認識しています。そのため、本書を読んで改めて自分を変えていかないと、と思った次第です。
さて、上記原則は本書のごく一部で、かなりの数の原則が記載されています。500ページ以上と長いので、ピンときた項目を読むだけでも学びは多いと思います。これを参考にしながら、自分自身の原則を作ってみてはいかがでしょうか。もし失敗したらそれを直視し、原因を分析して、改善する、といったことを繰り返し、人生で何度も生かせる原則を作り上げ、また磨きをかけていけるとよいと思います。
もし長いのが苦手という方がいれば、エッセンスのみを抽出した絵本版から手に取ってみてください。そちらを読んだ後、本書を改めて読むと、理解が早いと思います(私はそうしました笑)
今回は以上です!
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