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今は景気サイクルのどこに位置するか?『金利を見れば投資はうまくいく』から考える【書評】

今回は、SBIボンド・インベストメント・マネジメントの社長・堀井正孝氏の『金利を見れば投資はうまくいく』をご紹介します。

著者は、国内有数の先進国債券ファンド「グローバル・ソブリン・オープン」の元運用責任者です。

金利は、まだ表面化していない景気の変調を教えてくれるため、金利の仕組みを知れば、投資の確実性が上がると著者は述べます。

実際、今年の2月-4月にかけて米長期金利が急上昇し、ハイテク株が大きく売られる場面がありました。今後も金利の影響で相場が大きく振れることが予想されますが、本書はそういった背景を理解する一助になると思います。というのも、金利を通じて景気サイクルのどこに位置するのかを把握できるためです。それにより、できる限り高値つかみを回避し、買い場・売り場を見通すことで、損を最小限にし、儲けの最大化に近づけると述べられています。 

そんな本書から、「そもそもの金利の仕組み」と、「景気変調のサイン」について内容を簡単にご紹介します。

金利とは

そもそも金利には、短期金利長期金利があります。

短期金利は、一年未満の金融商品金利です。ざっくりとは、中央銀行が景気の安定のために変更する政策金利と理解して差し支えありません。例えば、景気がいいときは、利上げ(金融引き締め)で市中に出回るお金の量を減らします(お金を借りたい人を減らす)。逆に、景気が悪いときは、利下げ(金融緩和)でお金の量を増やします(お金を借りたい人を増やす)。

一方、長期金利は、一年以上の金融資産の金利です。10年国債利回りが一つの指標として取り上げられます。国が10年間資金調達する場合のコストを意味し、10年間の市中金利の基準といえます。

金融政策サイクルの四季

著者は、景気のサイクルに、信用サイクル、金融政策サイクル、在庫サイクルの三つがあると整理しています。中でも、金融政策サイクルは重要です。 

金融政策サイクルとは、景気と金融政策の関係を表します。具体的には、約5年サイクルで「景気回復→金融引き締め(利上げ)→景気減速→金融緩和(利上げ)」を繰り返します。

金融政策サイクルは4つの四季があります。

春に長期金利が上昇すると、その後夏に短期金利が上昇します。また、秋に長期金利が低下すると、その後冬に短期金利が低下します。理由は、長期金利が景気や資金需要に影響を受けて変動しますが、それを受けて金融政策によって短期金利政策金利)を上げ下げするためです。

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金利を見れば投資はうまくいく』を基に作成

長期金利は、景気の変化に敏感に反応します。つまり、今の景気を示すバロメータといえます。一方短期金利は、景気の変化を見極めるまでは変動させません。金融政策における様子見の期間が1年程度あることを考えると、長短金利の動きには、一年程度のずれがあるようです。

また夏の終わりには、短期金利長期金利を上回る(逆転*)状態がみられます。

*長短金利差(長期金利短期金利)は、ほとんどの期間はプラスで推移

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金利を見れば投資はうまくいく』を基に作成

春は短期金利は動かず、景気に敏感な長期金利は上昇を始めます。そのため、長短金利差は拡大します。

夏になり、夏だと経済指標から確認できた段階で、やっと短期金利が動きます(利上げされる)。長期金利は、短期金利に追いつかれる形で、夏に長短金利差が縮小していきます。長短金利差が縮小し始めたら、景気減速のサインです。つまり、秋が近いということです。

秋は、春同様、短期金利は様子見で動けず、長期金利が低下を始めます。つまり、長短金利差が縮小します。

冬になり、やっと景気状況を確認し、短期金利を下げます。そうすると、秋から縮小していた長短金利差が拡大します。長短金利差が拡大し始めたら、景気が回復するサインといえます。

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金利を見れば投資はうまくいく』

このように、長短金利差は、景気変調のサインといえます。

夏でも、景気に対して敏感な長期金利は、将来的な冬の気配を感じると低下を始めます。そのため、夏から秋へ季節が変わるとき、長短金利は逆転します。

夏に金融政策の引き締め局面が来ますが、そこで長短金利差がマイナスになったら、引き締め(利上げ)は終了し、景気減速局面(秋)が到来したことを意味します。あるいは、景気後退局面(利下げ・冬)が近いとのサインとも言えます。

 

長短金利差の具体的な数値基準として、著者は以下を挙げます。

1.長短金利差の1%割れは、ISM製造業景況指数*の50割れを懸念すべき

2.長短金利差の0%割れは、景気後退局面入りの可能性大。一年後に要注意

 *全米供給管理協会(ISM)が公表しているアメリカの製造業の景況感を示す指数

 

さて、過去の長短金利差の逆転状況を見ると、確かに景気後退前に、長短金利差の逆転がみられます(下記では、短期金利は米国3か月債利回りが参照されています。参照元

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JPモルガン記事より

現在地と今後の展望

では、今は四季のどこに位置していて、移り変わりはどのタイミングと想定されているのでしょうか?

・前提として、2008年リーマンショック後、政策金利をゼロ%近辺に引き下げ。また量的緩和開始。その後2015年頃からFRBがテーパリング開始。2016年から政策金利を段階的に上昇。このままテーパリングが継続されると想定されていた

・しかし、2020年の新型コロナで、3月に緊急利下げ、その後テーパリングを中止(量的緩和実施)

本書の内容に素直に当てはめれば、コロナ後の景気回復(春)に位置していると考えられます。そして、雇用統計や物価上昇など経済指標をにらみながら、利上げタイミングを見計らっているといえます。

実際、「米ダラス地区連銀のカプラン総裁は17日、米連邦準備理事会(FRB)による利上げは2022年末までに行われる可能性があると引き続き予想」というニュースもあります(参照元

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金利を見れば投資はうまくいく』を基に作成

実際、景気に敏感な長期金利が上昇し始めている、という春の特徴と一致します。また長短金利差も拡大しています。

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SBI証券HPより

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IR Bank HPデータを基に作成

そのため今後は、利上げの時期に関する見通しや、(金利ではないが)テーパリング開始の議論の動向により、株式相場は調整をはさみながら、夏、そして秋を迎えていくと考えられます(つまり、株価上昇局面が終盤に近づいている)

 

一方ウォール街では、米国株式相場について、「新たな強気相場の始まり」*という見方もあります。その根拠は、好調な企業業績から、ファンダメンタルが堅調といえるためです(2021年は、過去の年と比較しても、EPS成長が+25%と非常に強い部類に入る)。

*参照元

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四季報ONLINE記事より

この見方では、下図のように、現在地が回復期の序盤に戻り、株価上昇局面が続くという考えだといえそうです。ただ、だからと言って、利上げまでの期間が長くなるかは不明です。ですので、結局のところ、2022年なりその周辺のタイミングでの(段階的)利上げシナリオも考えたうえで、投資方針を練る必要があるということです。

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金利を見れば投資はうまくいく』を基に作成

私は、安全運転でいくならば、今年の夏にテーパリング議論があり、また利上げに関する言及も増えていく中で、徐々にそれらが織り込まれる(株式相場で調整が入る)前提で考えるのがいいと思います。

具体的には、消費安定株やヘルスケア株、またインデックス型ETFなどで調整期を耐え忍ぶ形です。私は、そうしながらも、新たにポートフォリオに組み入れたい高配当銘柄が割安になったタイミングで、買付を行うことも考えています(下記記事での検討ご参照)。

mike2020.hatenablog.com

今回は以上です!

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金利を見れば投資はうまくいく』は、金利から景気サイクルを分析する内容でした。それに対し、株式市場のサイクルの見極め方については、ハワード・マークスの書籍が参考になります。

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