資産形成における50代以降の出口戦略
先日勤務先の資産運用セミナーを受けました。そこからの学びを紹介します。
セミナーの内容は、よくある信託銀行による確定拠出型年金(DC)の運用アドバイスです。ただ、あえて参加したのは、50-60代向けセミナーがあり、エグジットタイミングのヒントが得られるかもしれない、と思ったためです(私自身は30代ですが)。
というのも、いろんな資産運用の指南が、たいてい「『長期』、『積立』、『分散』で、できるだけ若いころから始めればいいです、以上!」だからです。そのため、「最後はどうしたらいいの?」の答えが気になっていました。
今回のセミナーテーマはDCのため、退職しDCを受領した後の、資産全体を含む最終的なエグジット(出口)についての議論はありません。ただ、資産運用の基本として出口戦略で気を付けるべき点は、言及されていました。ですので今回、そこでの学びを、資産運用の最終フェーズに生かせないか考えました。
結論としては、退職後の想定資産額からみて、保有資産を取り崩しながら生活する必要がありそうな人は、退職が視野に入ってくる50-60代以降、徐々に安定運用へのシフトダウンを行うべし、です。
セミナーのポイント
1.期間、資金準備、投資の理解度を踏まえ、リスク許容度を考える
2.定期的にリバランスする
1.期間、資金準備、投資の理解度を踏まえ、リスク許容度を考える
期間ですが、運用期間が長いほど、リターンのブレが小さくなります。ですので、残りの運用期間が長い20代の方が、短い50代よりもリスクをとった運用が可能です。
資金準備については、例えばほかの運用口座に定期預金があるのであれば、DCでの運用はリスクをとれる、といった形で、運用全体像を見てリスク許容度の検討が必要、ということです。
また、投資の理解度が高ければ、それに合ったリスクの高い商品も検討可能ということです。
2.定期的にリバランスする
市況の変化によって、商品の保有比率が変わります。それを、最低年に一回はリバランス(保有商品の組み換え)しましょう、という基本的なお話です。
特に、運用期間が短くなってきた50-60代では、知らぬ間にハイリスク・ハイリターンの投資になっていると、もしリーマンショックレベルの下落が起こった場合に、資産が大きく減ってしまいます。
例えば、株式50万円、債券50万円で積み立てても、株価が3倍になった場合、株式150万円、債券50万円となります。もしこのタイミングでリーマンショックが起こり、株式が半値になると、株式75万円に減ってしまいます。DCでのエグジットが近い50-60代でこうなると、資産が減ったままでの受け取りとなります(10年延長しての受け取りが可能なものもあります)。
過去の○○ショックで市場が回復するまでにかかった期間を見ると、数年6年以上かかる場合もあります。
2000年 ITバブル崩壊 3年11カ月
2007年 リーマンショック 6年2か月
2015年 チャイナショック 2年
2020年 コロナショック 7か月
そのため、DCでいうとエグジットまで10年を切った50代では、徐々に安定運用にシフトした方がいい、と考えられます。端的には株式比率を減らし、債券を買い増すなどです。
まとめ
上記学びの最大のポイントは、投資の残り期間を踏まえたリスク許容度の認識と、それを踏まえた安定運用へのシフトダウンです。
まず、60-70代での退職後の資産・運用状況について、大まかに以下のようなタイプが想定されます。
1)既に安定運用にシフトしてきている人
2)安定運用にシフトしていない人(=許容度以上にリスクをとるポートフォリオとなっている人)
A.年金+インカムゲイン(配当等)で生活に支障なく、株価が下がろうが、保有金融商品を取り崩す必要がない人
B.年金+インカムゲインでは生活費が賄えず、保有金融資産の取り崩しを行いながら、生活する人
2)-Aは、連続配当株などを保有し、景気が悪化しようが、配当が振り込まれれば、保有資産で死ぬまで生活できます。
このタイプの人の悩みは次に、「死ぬときに資産をどうしておくのがいいか」になりそうです。例えば、
・本人が資産を使いきりたい
・家族に残したい
・社会慈善活動に使いたい
など。おそらく「家族に残したい」が一番一般的かと思いますので、その際には、次に「どうやって相続するのが一番効率的か」という検討に入ると思います。
ただいずれにせよ、2)-Aの人は生活の不安は小さいので、大きな問題はないと思います。あるとすれば、保有銘柄のポートフォリオによっては、景気悪化で配当が止まるようなケースです。これは、連続配当株など中心に積み立てておくことで、解決できると考えます。
一方、2)-Bの人は手当が必要です。月々、保有する金融資産を切り崩しての生活です。ですので、それがいつまで持つのか、という心配があるでしょう。
また切り崩すときは、保有商品の売却タイミングに時間的余裕がないため、含み損を抱えたままの商品でも、生活費が必要であれば損を確定せざるを得なくなります。そうすると、「利益が出ている間に確定しておけばよかった」と後悔することになります。これが、私が冒頭懸念していた、エグジットの失敗です。
こうならないために、ここでDCセミナーのリバランスの話を思い起こします。つまり、年齢(この先の運用期間)を踏まえたリスク許容度を念頭に、適切なリバランスを事前に行っておく必要があるのです。
すなわち、退職が視野に入ってくる50-60代以降、リスク資産の割合を下げるなど、徐々に安定運用へのシフトダウンを行う方がいいということです。
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