連続増配企業かつビジョナリー・カンパニーを紹介。『ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則』【書評】
今回は、ジム・コリンズ『ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則』を紹介します。
本書でビジョナリー・カンパニーとは、「ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業」を指します。また、「ビジョナリー・カンパニーは、商品のライフ・サイクルを超え、優れた指導者が活躍できる期間を超えて、ずっと反映し続ける」といいます。
具体的には以下のような企業があります。
3M、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、GE、IBM、ジョンソン・エンド・ジョンソン、マリオット、メルク、P&G、ソニー、ウォルト・ディズニー etc
3Mやジョンソン・エンド・ジョンソン、P&Gなど、連続増配企業ランキングでよく上位にランクインする企業も含まれています。
選出は、フォーチュン500社の経営者へのインタビュー、同業界の有力競合との比較など、数十年にわたり、定性・定量両面で分析した結果、行われています。
ビジョナリー・カンパニーの理解を進めるうえで重要なのが、ビジョナリー・カンパニーの生存の法則です。
- 企業そのものが究極の作品(製品ではなく)
- 現実的な理想主義
- 基本理念を維持し、進歩を促す
- 社運を賭けた大胆な目標
- カルトのような文化
- 大量のものを試して、うまくいったものを残す
- 生え抜きの経営陣
- 決して満足しない
中でも私が注目したのは、「7. 生え抜きの経営陣」です。
ここで重要なのは、生え抜きがいいのか、社外登用がいいのかといった点よりは、ビジョナリー・カンパニーは、経営幹部の育成と後継計画が優れている、という点です。それにより、生存法則で挙げられている「理念の維持」が可能となります。
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要するに、ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業の差をもたらしている最大の要因は、経営者の質ではない。重要なのは、優秀な経営陣の継続性が保たれていること、それによって基本理念が維持されていることなのだ。
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これについて、コルゲートとP&Gの比較が示されています。
コルゲートは、20世紀初頭までP&Gと肩を並べる企業でした。しかし、1940年代になりP&Gに比較して規模が半分以下、収益性が1/4となり、それ以来40年にわたってその状況が変わっていない、といいます。
そしてその要因に、かつては強かった基本理念から離れてしまったことを挙げます。コルゲートは理念として、小売店・顧客・従業員などとの公正な関係を持つといった基本価値を持っていました。
しかし事業拡大のために、小売店と厳しい交渉に臨むようになり、小売店からの反乱にあいました。そして1928年から33年までの間、コルゲートの売上高利益率は9%から4%となったのです(P&Gは11.6%から12%)。
この混乱の要因の一つとして、「P&Gと比べて後継計画が貧弱で、経営者の継続性が保てなかった」といいます。
コルゲートは四代までは、すべて生え抜きの人材(創業者一族)が経営者でした。それが20世紀初めに、経営幹部の育成と後継計画に失敗しました。1920年代後半には、後継人材の不足から、パルモリブ・ピート(同業他社)との合併で、外部の人材を経営者にする方針としました。ここで、基本理念がおろそかにされたと分析しています。
一方でP&Gは、経営幹部を常に育成し、どのレベルでも引き継ぎで断絶が起こらぬよう、基本理念を会社全体で維持することを重視しています。「人材が山をなすプロクター&ギャンブル」と表現しています。この点、P&G出身の経営者の活躍など、日本でもニュースで目にすることもあり、納得感はあるかと思います。
上記の経営人材育成の問題は一例ですが、そのほかの生存法則も含め、会社のベースとなる理念を維持し、製品やサービスを進化させる仕組みを有することは、企業の継続的な成長につながります。その意味でビジョナリー・カンパニーは、株式の長期保有銘柄を検討する際の一つの参考にはなると思います(コルゲートも優良企業で、連続増配企業ではありますので、あくまで参考の一つです)
私は実際、ビジョナリー・カンパニーの中では、3M、ジョンソン・エンド・ジョンソン、P&Gの株式を保有しています。長期保有が前提です。もちろん、ビジョナリー・カンパニーだけが理由ではないですが、背景情報として参考にしました。
皆さんも、同一業界内の銘柄選択で困った際ときなど、参考情報として、本書を読んでみてはいかがでしょうか。
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